DJI Phantom 4 Proが採用したメカニカルシャッターとは何かを徹底解説

「メカニカルシャッター」なにやらかっこいい響きのワードですね。
昨今のカメラに搭載されてあるシャッター機構は大きく分けて「メカニカルシャッター」と「電子シャッター」の2種類に分かれます。
DJIはPhantom 4Proにこのメカニカルシャッターを同社で初めて採用しました。
それぞれメリットデメリットがあるので、まずはその違いを理解したうえで、なぜPhantom 4Proがメカニカルシャッターを採用したのか解説します。

メカニカルシャッターの主な仕組み

端的に言えば、従来のフィルムカメラ時代から現代の一眼レフにまで広く採用されている機構です。「物理シャッター」とか呼ばれたりします。

中でも細かく種類がありますが、中でも「フォーカルプレーンシャッター」という仕組みが一般的です。

カメラ好きなら誰しも聞いたことがある言葉だと思いますので、おさらい程度に解説していきましょう。

 

先幕&後幕

カメラの撮影の仕組みは、センサーやフィルム面に対して何秒間光をあてるか制御することが主な機能となっています。

レンズからセンサーは一直線に光が当たり続けるので、裏を返せばどのようにして光を遮るかを編み出すことが、長いカメラ産業の歴史の中で研究されてきました。

その結果「先幕」と「後幕」の2枚の板を用いて遮光制御する「フォーカルプレーンシャッター」が開発され、現在多くのカメラに搭載されています。シャッターの動きは設定されたシャッタースピードの速度で単純に走っているのではなく、先幕と後幕が動き出すタイミングによって調整される隙間によって露光量を決めているのです。

まずカメラのレリーズと同時に先幕が降下を始めます。以下の画像のようにシャッタスピードが中速の場合(1/125sなど)では、先幕の降下によって設定された数値分の隙間(スリット)ができたと同時に後幕を降下させ、スリットを維持しながらセンサー全体への露光を進めていきます。

シャッタースピードが高速(1/1000sなど)になってくると、スリットがほんのわずかな距離に調整されます。逆にシャッタースピードが低速(1s)の場合、先幕が降り切っても後幕は露光時間1秒を満たすまで降下が始まらず、シャッター全開の状態が続いています。

両幕が落下する物理的なスピードは常に一定ですが、それぞれ降下がスタートするタイミングをずらすことで開く隙間の幅を調整し、様々なバリエーションのシャッタースピードを無理なく制御しているというわけです。

電子シャッターの主な仕組み

仕組みといってもメカニカルシャッターと違って相手に実体がないので、イメージしづらいと思いますが、その名の通り電子の挙動でセンサー面に当たる光を制御し、記録を行う仕組みです。

物理的なシャッター機構が搭載されていないため、コンパクトなカメラに採用されることが多いです。

また様々なカメラのビデオモードでは断続的にフレーム、つまり連続した写真を映像として記録しています。

つまり物理シャッターを使って延々と記録していくことは、構造上どう考えても不可能なので、物理シャッターがあっても全開にしてセンサーを露出させ、電子シャッターとして映像記録が行われています。

 

記録のイメージ

実際にはセンサー表面の素子ひとつひとつを信号として読みだして変換し、記録しています。

ちなみに上の画像に描かれてある矢印を見ると、センサーの左上から順番に素子が光を処理しているように見えますよね?

実は電子シャッターの読み出し方式には大きく分けて2種類あり、上の画像のように順次素子がデータを読み出していく方式はローリングシャッター」または「ライン露光順次読み出し」と呼ばれています。

 

CMOSとCCDの違い

スマートフォンから一般のデジタル一眼レフに至るまで、昨今の受光センサーは「CMOS」とよばれるものが搭載されています。

設計や価格の理由からほとんどのCMOSセンサーではこのローリングシャッターで読み出しが行われています。

もう一つの読み出し方式は、「グローバルシャッター」または「同時露光一括読み出し」と呼ばれる仕組みです。

安価で大量ロット向けのCMOSセンサーとは違い、比較的高価な機種に搭載される「CCDセンサー」による仕組みです。

ローリングシャッターがライン上に順番にデータを読みだしていくのに対して、グローバルシャッターは一度にすべての素子を読み出し作業に使えることができます。

専門的なことは割愛しますが、小型化する必要ないカメラはその分高出力な電子制御系統を搭載することができるので、一気に信号を処理できるというしくみです。

かつての一眼レフやビデオカメラには多く搭載されていました。今では業務用として扱われることが多いので、一般的にお目にかかることはあまりありません。

ローリングシャッターのデメリット

デジタルカメラ時代の変遷で、一般向けのカメラが流行りだしたので、CCDからCMOSにセンサーのシェアが入れ替わり、スマホやコンパクトデジタルカメラ、一部のミラーレス一眼など、身の回りにある手軽な部類のカメラはほとんどこのローリングシャッターを採用していると思います。

しかしユーザーが増えることで浮き彫りになってきたのが、ローリングシャッタの読み出し方式による性質が原因で起こる「ローリングシャッター歪み」という現象です。

このような画像に見覚えはないでしょうか?

画像引用:http://image.itmedia.co.jp/mobile/articles/1401/07/l_hi_IMG_4543.jpg

車窓から富士山を撮った時に映り込んだ電柱が、ありえないほど斜めに映っていますね。

なぜこのような状態になるのでしょうか?

例えばトラックが右に横切っていく瞬間を撮影したと想定します。

白の帯はセンサー面の走査線と言い、ローリングシャッターが上から下に画像を読み出しているのを表しています。

わかりやすくするためにこの画像ではトラックは遅く走っていますが、実際には50km/hほどのスピードが出ているはずです。読み出しラインも本当はもっと速いです。

この状況を段階的に確認すると以下のような状態となります。

その結果以下のような画像が記録されることになります。

この例では被写体自体が動いている場合を想定しましたが、相対的には電車に乗っていて自分が動いていても意味は同じ事です。

(余談ですが「富士山が見える線路は富士山の南側にしかない」ということを前提に、さきほどの車窓画像を見てみると、電柱の傾きの向きから考えて列車は大阪方面に走っていることがわかります。)

 

細かい話ですが「上から下に光が記録されることで画像がずれるなら、同じ方向に幕が動くメカニカルシャッターでも一緒なのでは?」と思ったそこのあなた、良い疑問です。

実際にはフォーカルプレーンシャッターでも歪みは発生します。しかし幕速が比較的早いために、ほとんどのケースで認知できるほどの歪みは発生していないと言えます。

ローリングシャッターにおいては、素子の記録信号が走査線に沿って進んでいく挙動が、フォーカルプレーンシャッターの記録に対して明らかに遅いんです。

日常には様々な速度の被写体が見受けられますが、通常のローリングシャッターではその全てを真っすぐに捉えることが難しいのです。

 

電子シャッターのメリット

電子シャッターのメリットとしては、メカニカル機構がないことによる小型・軽量化だけではなく、シャッタースピードや連射性だけならメカニカルシャッターの限界をはるかに超えた数値で動かせます。

しかしローリングシャッター問題の本質は「ブレ」ではなく「歪み」なので、いくら高速で撮ってもその刹那に発生する電気信号の遅延がボトルネックとなり、「ブレていないけど歪んでいる」という結果がよくあるのです。

参考:http://www.next-zero.com/HDV/S270J-06/001.php

 

DJI Phantom 4Proのメカニカルシャッター

従来のドローンのカメラでも小型機さながらに電子シャッターが搭載されていますので、高速移動する被写体はもちろん、最速で航行したり首を振った際など自身の動きによって写真が歪んでいたと思います。

特に昨今では最高航行速度もますます上昇しており、時速20km/h~30km/hで飛行しながらシャッターを切るケースもあると思います。

DJIのPhantom 4Proでは、そのローリングシャッター歪みを回避するために、メカニカルシャッターが遂に採用されました。

従来のカメラ業界では軽量化や取り回しの観点から、やむを得ずも電子シャッターが搭載されたカメラが増え、ドローンもその例外ではありませんでした。

しかしインフラ整備など、産業的にドローンによる写真撮影のニーズが高まっており、歪みのない正確な写真を手ごろな価格の中級機でも運用できることがドローン業界でも理想だったのではないでしょうか。

 

まとめ

メカニカルシャッターといっても実際にはセンサー前に位置するフォーカルプレーンシャッターだけではなく、一般的にはレンズシャッターの部類など様々ありえるので、実際にはPhantom 4Proにどのような機構のメカニカルシャッターが搭載されているかは不明です。

ただ、Zenmuseでは搭載されていたメカニカルシャッター機構が、Phantomレベルの下位機種まで採用されたのは、小型化技術の観点からも大きな進歩だと思います。

本機では最高シャッタースピードも1/2000ということで、写真撮影的にも晴れた日でも適正露出が取れる範囲です。

一般的には動画用途の多いドローンも、ローリングシャッター歪みが解消されたことで、今まで以上に写真の用途が増えるかもしれません。

産業的には写真を応用したインフラ解析の事例が数多く期待されており、様々な事業所に対してより一層精度の高い情報を持ったグラフィックデータを提供することができます。

歪みのない写真を撮るという当たり前のことですが、小型なカメラを搭載しているドローンには今まで難しかったので、Phantom 4Proを皮切りに今後の製品にも採用してほしいところですね。

 

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